SmiPleの玩具はとってもたくさんのパーツからできています。そのパーツひとつひとつにこだわりを持ち、想いを込め、てづくり製作しています。ねじ一本もてづくりです。
ここでは、そんなSmiPleのものづくりの中でも、代表的な玩具である「カム遊び」にフォーカスして、玩具誕生秘話から製作工程までの一部を紹介したいと思います。

 


 

【カム遊び誕生秘話】

子供向けの木製メカニカル玩具を考えだした頃、なにかヒントはないかと1冊の育児本を読んでいました。
その中に、ねじ遊びをしている子供の絵があり、メカニカル出身の私には、このねじがカムシャフトにしか見えなかったのですね(笑) そこから、カム遊びの発想が生まれました。
カムを自分自身で付け替え体験しながら、カムの性質・動きが理解できる玩具、私自身が機械設計の仕事をする前に出会いたかった玩具です。
写真1 ねじ玩具

 


 

【構想】

写真2 初期のカム遊び構想 上のような発想が生まれてから形ができるまで、一番肝となるのが手書きによる構想です。
ポンチ絵と呼びます。
どうやったらカムシャフトを活かした玩具ができるのか、パーツはどんな形状にしようか、丈夫さ・安全面は確保できるのか、どんな知育効果が得られるか、どんな材料が良いのか、どんなデザインにしようか、あらゆる面から考える、一番頭を悩ませる工程ですが、私の一番好きな時間でもあります。

 


 

【設計】

構想が固まったら、次はいよいよ設計です。CADというソフトを使って具体的な図面を描いていきます。
設計図はまず組立図を描くところから始まり、その後部品を一点一点抽出して部品図を作図します。ST安全基準書を参考に、寸法や面取りの配慮、強度不足が無いか等もチェックしていきます。
詳細な図面を描き進めていくと、構想のようにはいかないこともしばしばですが、一番シンプルにまとまる方法をひたすら検討していきます。
写真3 CAD設計の様子

 


 

【ねじ一本から】

設計の後は、いよいよ加工に入ります。
初めは、木のねじってどうやってつくるのだろうか…というところからのスタートでしたが、なかなか面白い工程にたどり着きましたので簡単に紹介していきますね。

木のねじをつくるには、まず角材が必要です。角材が準備できたら、写真4のように電動ドリルと専用のジグを使って加工します。
まるでエンピツ削りのように角材が丸棒へ削られていきます。

写真4 丸棒づくりの様子

次に丸棒へねじ切りを行います。
トリマーと呼ばれる電動工具とねじ切り専用のジグを使います。人手で丸棒をぐるぐる回すと、写真のようなねじがつくられていきます。

写真5 ねじ切りの様子

その後、サンドペーパーで磨き上げ、2度のオイル塗布を行い、ようやくねじの完成になります。
パーツによっては、ここから更に加工を加えるものもあり、完成までの道のりはさまざまです。
写真6 仕上げの様子

 


 

【アリ溝組み】

カム遊びの本体(箱)は、アリ溝組みと呼ばれる伝統的な木組みを用いており、加工工程の中でも一番の醍醐味になります。古くからある神社仏閣等の建築物が物語っているように、金物を使わない木組みの丈夫さ、そして美しさがここには詰まっています。
写真7のように台形状の凹凸を組み合わせたものが、アリ溝組みになります。

写真7 アリ溝加工の様子


微調整を重ねて凹凸が嵌るようになったら、ボンドをつけて‘はたがね’と呼ばれる工具でクランプします。

写真8 クランプの様子


写真9 本体(箱) 隙間がない様仕上げていき、サンドペーパー・オイル塗布を行い完了です。

 


 

【人形製作】

写真10 糸鋸加工の様子 カム遊びに取り付く魚たちのは、赤や黄色など、色味の入った模様・デザインとなっています。これらは着色しているわけではなく、種類の異なる木材を組み合わせています。
つくられた色ではなく、自然からなる木そのものに触れてほしい。そんな想いを込めて製作しています。

写真10のように、異なる木種を組み合わせた板を、糸鋸盤でくり抜いて形をつくっています。


ここからは、ひたすらサンドペーパーがけです。
サンドペーパーは目が粗いものから細かいものへ順番にかけていくことで、上質な質感と見栄えが得られます。
全5種類の目の異なるサンドペーパーを使用しています。
写真11 サンドペーパーの様子


写真12 サンドペーパー後の魚たち 木工は手をかければかけるほど美しくなる。私の木工の先生の言葉ですが、地道なペーパーがけによりガラッと変わる作品の表情は、思わず見入ってしまうものがあります。


 


 

【最後に】

写真13 カム遊びと子供たち

上で紹介した以外にも、様々な加工方法を用いてSmiPleの玩具は成り立っています。
そして、独自のチェックリストに基づき安全確認、動作確認を行った上で製作完了となります。

このカム遊びも、作り始めはパーツ一点一点の加工方法に悩み、試行錯誤を積み重ねてきました。
図面上は上手くいっても、実際につくってみると動かない…など思い通りにいかないことも多々あり、なんども改良を重ねてきて、ようやく商品としての形が完成しました。
これで終わりではなく、今後も皆様の声を頂きながら、さらに向上し、さらに楽しんでいただけるものを目指し、日々邁進していきたいと思います。